医桜通信

第2回 野崎暢仁先生

2011年4月10日 6:28 PM

野崎暢仁氏
康生会 武田病院 臨床工学科 科長代理
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TEAM TAKEDA Clinical Engineer
(前列左から3人目 野崎氏)

私のターニングポイント

みなさんこんにちは。
京都駅前にある康生会武田病院の循環器部門で働いて10数年目の野崎暢仁(のざきのぶひと)と申します。
まずはじめにお断りしますが、私は「できる人」ではありません。小学校から専門学校を卒業するまで成績はいつも下の方。先生や親にも、いつも心配ばかりさせていた子供でした。臨床工学技士として仕事をしてからも頭の悪さは続いています。
しかし、私は「負けず嫌い」です。今こうして仕事をさせていただけているのはこの性格のおかげではないかと思います。

私が、入職した1999年はちょうど世間も病院も2000年問題の対応に追われていた時期でした。私のターニングポイントのひとつともいえる大きな出来事。それは尊敬する、心底おっかない上司との出会いです。
今も気にかけてくれて、とても良くしていただいているその上司は、今は別の病院で働いておられます(一緒に同じ病院で仕事ができなくなったときが、私の2つ目のターニングポイントであったと思います)が、入職当時から、それはそれは「おっかない」上司でした。
なぜおっかないかというとその理由はただ一つ。その上司が凄まじく「できる人」だったからです。知識量は半端なく多く、しかも自身の知識は惜しみなく後輩たちに教えてくれる。そして、仕事は当然完璧にバリバリこなす。おそらく、ろくに勉強もしてこなかった私にとって、初めてお付き合いするであろう「できる人」だったのです。
そして、自分とあまりにもかけ離れた存在だったので、おっかなかったのだと思います。こんな私でもなんとか今こうして仕事できるのも、(おっかない)尊敬するその先輩のおかげであると思います。

入職当時の私の考えは今思えば間違っていました。
コメディカルはドクターのお手伝いさん。医師の指示のもと=医師の言う通りにすればよい(あまり深く考えない性格のため本当にいろいろ考えてそう思っていたのかは不明ですが。。。)という考えは、その上司の仕事ぶりをみていて、自分が臨床工学技士としての仕事というものが少しわかり始めた頃に間違っていると気づかされました。

臨床工学技士は、その専門知識と技術を、医師を始め他のスタッフに提供し、我々はそれぞれの医療スタッフから同じように専門知識を提供され、それを合体させて患者様に医療を提供する。そればかりではない。自分の専門分野の知識だけを持ち合わすだけでなく、他の職種の知識も吸収し、それに対しての自分の専門分野の知識を構築する。こうすることによって互いの意見を尊重し合える、そして互いに協力し合えるチームを作り上げる事ができる。それがすなわち本当の「チーム医療」なんだ。と今はこんな考えにかわりつつあります。

PCIに参加していて、例えばIVUSの解析をしていたとします。画像収集が終えた後、解析に入るが、解析するポイントを探しているとき医師から「もうちょい前!」「もうちょい後ろ!」「そうそうそこ!」そんな声が聞こえるカテ室には医師以外、国家資格を持った医療スタッフはいないのか!と思います。たとえその後「内径○○×○○mm」「外径○○×○○mm」という声が医師以外からのスタッフから聞こえたとしてもです。
折角、我々は国家資格を有した列記とした医療スタッフなのです。
 「先生!ここにはプラークが多くあります。ランディングポイントをもう少し前にした方がいいんじゃないですか?」というようなアドバイスができれば、専門知識を活かした、チームに貢献した事になるのではないかと思います。もちろんそんなアドバイスができるようになるためには勉強が必要です。医師だからこれを知っておかなくてはならない。ではなくて私たちの意見も参考にしてもらうには、あらゆる知識をもっておかなくてはなりません。理論武装しておかないと、適切なアドバイスができないのではないかと思います。

こんな偉そうなことを書いてしまいましたが、冒頭にお断りした通り、私は「できる人」ではありません。私が今述べた事が、実際の臨床の現場でできているとは到底思えません。しかし、もう一つお断りした通り私は「負けず嫌い」です。いつかは最初に登場した「尊敬する先輩」に、せめても「対等に」アカデミックな会話ができるように今現在、全力で頑張っている所存です。そしてなにより患者様がより安全に安心して治療を受けていただくために。元気に退院していただくために努力を惜しみたくありません。
 「人間ひとりで頑張るには限りがある。」
いいわけにになるかもしれませんが、最近伸び悩む私の考えです。そこで、私の尊敬できる先輩方と、あるチームを組ませていただいています。それは「WCCM【西日本コメディカルカテーテルミーティング】」です。この会の発足が、私にとって3つ目のターニングポイントになるのではないかと思います。
WCCMは、心カテに従事するコメディカルスタッフおよび心カテに関わるすべての方々を対象に、心カテに必要な基礎知識から日頃の疑問、他施設のやり方などを参加いただく皆様と一緒に学ぼうという趣旨の会であります。
現在までに3回のセミナーを開催させていただきましたが、毎回200名を超える定員いっぱいの方にご参加いただいております。いつも多くの方々に参加いただいているという事は、心カテに従事されている皆様が、自身のスキルアップを望み、より良い医療を患者様に提供したいと思っておられることの証だと思います。我々はそんな皆さんがいる限りこの会を続け、どこの施設でもクオリティーの高い心カテができるよう、皆さんで学ぶ場を提供していきたいと思います。

私の周りには「尊敬できる」「信頼できる」先輩・スタッフ・Drをはじめとする病院スタッフ、 関連企業の皆様、他の施設の皆様方などたくさんおられます。皆々様に感謝の心を忘れず、常に向上し続ける、誰にでも自慢することのできる、なによりも患者様に安心して安全な治療を提供する事のできる「チーム」で、今後も頑張っていきたいと思います。

WCCMはこちら

略歴

野崎暢仁
昭和52年2月19日生まれ

1996年 神戸総合医療介護福祉専門学校 臨床工学科 入学(現 神戸総合医療専門学校)
1999年 神戸総合医療介護福祉専門学校 臨床工学科 卒業
医療法人財団 康生会武田病院 臨床工学科入職
2010年 医療法人財団 康生会武田病院 臨床工学科 科長代理 昇格
現在に至る

所属学会
日本心血管インターベンション治療学会
日本臨床工学技士会、京都府臨床工学技士会

資格、役員
臨床工学技士、京都府臨床工学技士会 理事

世話人、ファカルティ
WCCM 西日本コメディカルカテーテルミーティング 世話人、KCJL、倉敷 Live Demonstration 、CCT、ADATARA Live Demonstration など

専門(業務内容)
心臓カテーテル検査、心臓血管外科手術(人工心肺装置)、ペースメーカフォローアップ、ME機器管理