医桜通信

第3回 院長の役割(大阪船員保険病院 別府先生)

2011年10月26日 9:20 AM

大阪船員保険病院 院長 別府 慎太郎先生
1                  「資格取得者には、報奨金を」
大阪船員保険病院は、大阪府港区唯一の公的病院である。戦後まもなく船舶従事者の健康管理の目的で設置されたが、現在では、一般の総合病院として機能している。
「私立病院と違い、儲ける必要はないが、病院を存続し職員の雇用を確保する為には赤字では、困る」と別府先生。さらに病院の質を維持向上させていく為に、「スタッフは日々の診療だけでなく、勉強もしていく事も必要」と提言する。
医療職者の高度専門資格を取得するために、個人的に勉強する職員も多い。しかし、専門資格の取得には費用も掛かる。また取得した資格は病院のためにもなる。それ故、努力をして結果を出した人に褒賞を出すのは当然」とそれらを支援するのも病院の役目との考えも述べられた。
現在、取得した資格の程度に応じ、最高30万円の報奨金を出されているとの事。また資格取得に限らず、学会参加費の支援や、学会発表者への報奨金制度もあると話をされており、報奨金制度については充実しているように思えた。
筆者からの「スタッフの教育支援に積極的な病院作りをされているのですか?」との質問に対しては、「スタッフの教育は大切なことなので、どこの病院も同じではないか」と別府先生は言い、「学会などのプログラムには演者名と所属施設名が記載されている。それを通じて病院を知ってもらって、良いスタッフが入ってきてくれるなら、学会発表をしてもらうのも病院にとって良い事」と病院とスタッフが共に成長できる方針を打ち出されている。「職員の安全確認と、院長メッセージ」
先の東日本大震災があった事もあって、港近くの病院である大阪船員保険病院に、津波対策のようなものをしているのか、質問をしてみたところ、別府先生から「災害対策のマニュアルは出来ているが、実は、今まで職員の安全確認という病院としての発想はなかった」とした上で、今では災害時の全職員の安否確認をする仕組みを導入するそうである。こういった取り組みをしている病院は少なく、職員の安全を考える姿勢は非常に大事ではないかと、感じた。
また別府先生の方針や考えを全スタッフに伝えるために、定期的に「病院長通信」というメッセージを配信するようにしているとの事であり、風通しの良い風土を醸成しようとする姿勢が見られた。

病院スタッフの教育と、雇用を意識された取組をされており、参考頂ければ幸いです。(文責 溝口博重)

大阪船員保険病院

【略歴】
別府慎太郎先生
大阪大学卒(昭和44年)。
大阪大学名誉教授。
日本心臓病学会 功労会員、前評議員
日本超音波学会 名誉会員 、前理事
日本心エコー図学会 名誉会員、前理事長
日本コントラストエコー研究会 代表幹事
日本社会保険医学会 運営委員