医桜通信

第5回 大阪発 『教育』の多根(前篇)

2011年11月8日 12:26 PM

多根総合病院 看護部長 西村洋子氏多根総合病院は、京セラドーム大阪の隣接地に、今年3月に移転した病院です。
病院そのものは、昭和24年開設と歴史がありますが、今回の新築移転にて高精度放射線治療の導入、緩和ケア病棟の新設、充実の日帰り手術センターなど、諸設備の強化が図られており、明るくきれいな病院です。
詳しくは、HPをご覧ください。
多根総合病院 http://www.tane.or.jp/index.html 「教育の多根」と言われる教育制度について
今回、新病院として移転した、多根総合病院の丹羽英記院長と、西村洋子看護部長に、多根総合病院の教育制度についてお聞きをしました。昔より「教育の多根」と研修に定評があり、その辺りにつきまして、今回は聞いてきました。

看護部が目指す看護師像『TOOTAS NURSE』
「トータスナースの目標を定めて、1年と少しだがはっきりと効果が出てきた」と、多根総合病院看護部の西村洋子看護部長は、そう語る。
看護部教育の広報内容と臨床現場のギャップがこれまではあったが、それを今は解消する事によって、離職率が大きく低下した。
TOOTASとは、多根総合病院の看護部が目指すべき姿を分かり易く標語にした頭文字からとっており、様々な問題が生じると「TOOTASに合致しているか」と考え行動しているという

一見、どこの病院の看護部でもやっている事のように思えるが、それらを徹底するために様々な工夫をしており、それら積み重ねの結果が他の医療機関との差異になっているのだと思われる。
いくつか大きな取組があり、その一つが、定期的な部長面談の実施を行っている事である。
多根総合病院では、教育と現場のマッチングを重視している。西村看護部長は「今の職場で悩んでいる人から、早めに話を聞く事が重要」と考え、定期的な面談を看護部では全員行い、上司が部下の思いを理解し、受け止めるよう努力しているという。
実際、西村看護部長が就任された際も、こうした面談は行われているという話ではあったが、部下に実際に話を聞いてみると面談を行っていないケースもあり、それらを無くし、徹底して面談を行うようにしたという。
また、新卒看護師に関しては、丁寧な指導が必要と「看護個人録」というフアイルを貸与している。これは成長の段階目標や指導内容及び研修レポート等を保管するフアイルであり、チューターである先輩とのやり取りを含め、日々活用をしている。
そして、上記の取組の根幹にあるのが「TOOTAS」という看護師としての在り方がしっかりとある点との事が大きい。どこの医療機関でも同じ事が言える事だが、看護師が病院内では一番多く在籍しており、それぞれが自身の価値観を持っている中で、こうした病院組織としての在り方を分かり易く明示できている点が、熱心な指導をより効果的にしている。
また特筆すべきは、多根総合病院オリジナルのナース服である。
背中に刻印されている「トータス」のロゴの入ったナース服は、多根総合病院オリジナルのナース服である。新病院の環境に非常にマッチし、病院をより活性化している。

筆者自身、多くの病院を見て回ってくる中で、昨年より赴任された西村看護部長の取り組まれている、多根総合病院の新体制は理想の看護部モデルになっていくのではないかと思う。こうした教育指導体制はすぐには成果がでないが、引き続き、注目していきたいと思う。
(文責 溝口博重)

西村洋子 略歴
1
昭和47年3月 国立舞鶴病院付属高等看護学校卒業
(現・国立病院機構舞鶴医療センター付属看護学校)
4月 国立大阪病院就職(現・国立病院機構大阪医療センター)
昭和57年8月 国立京都病院看護師長に昇任(現・国立病院機構京都医療センター)

平成 5年4月 国立松籟荘病院副総看護師長昇任(現・国立病院機構やまと精神医療センター)
その後副看護部長で国立奈良病院(現・奈良医療センター)、
国立循環器病センター(現・国立循環器病研究センター)
平成14年6月 国立紫香楽病院総看護師長昇任(現・国立病院機構紫香楽病院)
その後看護部長で国立病院機構宇多野病院、国立病院機構刀根山病院で勤務
平成21年3月 退職
平成21年12月 きつこう会多根総合病院看護部長 就職
平成22年 4月 春の叙勲・・瑞宝双光章受章