医桜通信

第6回 大阪発『教育の多根』(後篇)

2011年11月16日 1:36 PM

多根総合病院 院長 丹羽英記先生先週に引き続き、「教育の多根」の話です。毎月、職員の満足度調査を実施
看護配置が病院経営で最重要視されるポイントである事から、どこの病院も看護師の採用と離職対策に注力している。その中で、西村看護部長より看護部の取組についてお聞きした。次いで、院長の丹羽先生より病院としての取組についてインタビューをした。
「離職対策として、職員の満足度調査を毎月実施。早い段階で職員の動向を把握している」との事。毎月はちょっとやりすぎなので、今後は3か月に1度と、苦笑されていたが、職員とのコミュニケーションに関しての自信が伺えた。
また丹羽先生はコメディクス(病院向けグループウェア)を利用して、全職員にメッセージを発信している。病院の方針などについて誤解されたくない、という想いから始めた事で、誰が見たかを把握できるだけでなく、直接返信もできるという。現場の不満などが上がってくれば、スタッフと直接、院長がミーティングもする。
「何かあれば、直接言ってもらいたい」という方針から、情報の発信と、そのレスポンスに対しては、かなり注力されており、働きやすい病院作りに取り組まれている様子が感じられた。
また年に1回の院内学会では、全職員が参加し、各診療科の取組紹介や著名人の講演などを企画し、その後の懇親会で交流も行っている。

転籍する医師の紹介状も書く
「多根総合病院は、手術件数も多く、外科系のDrが多く集まる病院」と説明されるだけあって、入院患者の半分は外科系の患者であり、充実しているとの事。一方で、診療科によっては医師の確保に苦労をされている部分もあり、そこが課題と丹羽先生は話をする。
「2年間は教育だが、それ以降、病院に残ってもらうには、やはり人間関係」と、ここでもコミュニケーションの重要性を指摘する。
「医局人事だけに頼ってしまうと、突然の医師の引き上げなど、経営的に不安要素が大きい」と、全国の医療機関すべてが共通する問題を挙げつつ、多根総合病院では院長の丹羽先生が他の医療機関に移りたいというDrに紹介状を書いて、橋渡しをしているという。一見、医師が減る事はマイナスのように思えるのだが「いずれは、多根総合病院に帰ってきてもらいたいからこそ、気持ちよく送り出したい」と言う。実際、他の医療機関に移籍されたDrが病院を見学に来て、再就職する。
また済生会吹田病院とは相互に研修医の受け入れをしているなど、若手が他の医療機関を経験する機会創りにも取り組んでいる。

教育に関してはカリキュラムも大切だが、それ以上に教える側と教わる側のコミュニケーションが重要視される。そういった観点から「教育の多根」と評される理由としては、やはり丹羽先生、西村看護部長ら経営幹部のコミュニケーションを徹底的に重視した取組が大きいのだと感じた。
新しい病院という事もあり、気持ちよく仕事をしたいという方には推薦できる病院だと感じた。
(文責 溝口博重)

丹羽英記先生 略歴
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1954年   大阪府生まれ
1980年3月 大阪大学医学部卒業
1980年5月 大阪大学第二外科研修医
1981年5月 大阪逓信病院(現NTT西日本病院)外科医員
1983年7月 大阪大学第二外科医員
1987年6月 多根総合病院外科医員
1992年2月 多根総合病院外科部長
1998年10月 多根総合病院日帰り手術センター長
2002年4月 多根総合病院副院長
2010年4月 多根総合病院院長

資格
大阪大学医学博士
日本外科学会認定医・専門医・指導医
日本消化器外科学会消化器がん治療認定医
日本内視鏡外科学会技術認定医 評議員
日本ヘルニア学会評議員・保険委員
日本短期滞在外科手術研究会常任幹事