医桜通信

【コラム】マイナンバー制度~医療機関としての準備は?副業・バイトがバレる?医療分野への応用は?~

2015年9月28日 10:25 AM

医桜会員のドクターから、下記コラムを頂きました。

PDFファイルはこちら → コラム☆マイナンバー制度

 

2015年10月のマイナンバー交付まで間もないため、コラムとしてまとめてみました。お時間あるときにご覧下さると幸甚です。

本制度は、社会保障・税制度の効率性や透明性を高め、国民にとって利便性の高い公平・公正な社会を実現するための社会基盤となる制度です。しかし、私含めて多くの奥門が本制度の詳細については理解できていないのではないでしょうか。そこで、今機会に次の項目について勉強しましたので、ご報告させていただきます。

 

①  諸外国におけるマイナンバー制度

②  本邦におけるマイナンバー制度はいつから導入?

③  医療機関として取り組むべきこと

A. どの従業員のマイナンバーを把握すべき?外国人労働者は?

B. マイナンバーを記載する必要がある書類は?

C. 従業員等への対応で注意すべき点

D. 従業員にマイナンバーの提供を拒否された場合の対応

④  マイナンバー制度導入における従業員が抱えている不安

〜副業・バイトがバレる?〜

⑤ マイナンバー制度の今後

 

  • 諸外国におけるマイナンバー制度

 

皆様はどれほどの先進国やアジア諸国において共通番号制度が導入されているかご存じでしょうか?答えは、先進国の中で導入されていない国は日本くらいのものです。

米国では、戦前である1936年に社会保障番号(SSN, Social Security Number)という名前で導入され、銀行口座の開設やクレジットカードや電話回線の作成など、官民に共通して利用されています。しかし、有効利用されている反面、成りすまし問題なども生じ、州によっては「SSNの印刷やSSNを認証に用いることを禁止」という本末転倒なことを招いているという背景もあります。これに対して、日本のマイナンバー制度は、一般民間企業(年金関係等は除く)が個人番号を個人識別に利用することを禁止され(激甚災害時に保険支払い対象者を検索するためなどには利用可能)、基本的には行政機関の利用に限られるようです。

では、その他のアジア圏の国々はどうでしょうか。

韓国では1962年に指紋の情報を含む住民登録番号とカードの携帯を義務付けています。これは北朝鮮のスパイ対策を視野に入れた政策とも言われています。また、中国・台湾・インド・タイ・シンガポールなど複数の国々で同様の制度が既に導入されています。もちろん、アイスランド・イギリス・イタリア・オランダ・ドイツなどの欧州、オーストラリア・カナダなどでも既に導入されています。

 

本邦におけるマイナンバー制度はいつから導入?

2013年5月24日、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(いわゆるマイナンバー法)が国会で成立、2015年10月5日に、住民票を有する国民一人一人に12桁のマイナンバー(個人番号)が通知され、2016年1月1日から社会保障や税金の申請や手続き・管理において本格的に本制度が指導される予定です。

通知は、市区町村から、原則として住民票に登録されている住所あてにマイナンバーが記載された「通知カード」を送ることによって行われます。マイナンバーは漏えいして、不正に使われるおそれがある場合を除いて、番号は一生変更されずに使用されるものです。なお、マイナンバーは中長期在留者や特別永住者などの外国人の方にも通知されます。

また、本年9月3日に衆院本会議で「マイナンバー制度」について、2018年から銀行などの預金口座にも任意で番号を適用する改正案が可決され、9月8日には閣議後の記者会見で、麻生太郎副総理・財務相は、飲食料品などへの軽減税率をめぐり「われわれとしては最終的に年度末なり年末なり、(負担増分が)戻ってくる還付方式をやる」と、消費税の負担軽減分を後日、消費者に還付する仕組みの導入を検討していることを明らかにしました。

この財務省がまとめた軽減税率の還付制度(案)は、2017年4月に消費税率が現行の8%から10%に引き上げられるのに合わせて導入される際に、酒を除く「飲食料品」への軽減税率に、国民全員に番号を割り振るマイナンバー制度を活用するというものです。要は、消費者が1000円の飲食料品を買うと、一たんは10%の消費税を含む1100円を支払うが、そのうちの2%分(軽減後の税率を8%と仮定した場合)に当たる20円が後日還付される仕組みです。

ただ、本発表後のインターネットでは、「レジの混雑が恐ろしい」「還付手続きが面倒のため還付金申請者が少なくて、ただ税収が増えるだけでは!?」「低所得者でもマイナンバーを使わないと軽減税率の対象から外れる可能性がある」「暗にマイナンバーの携帯を義務付けている」など否定的な意見も散見されます。

また、9月7日の記者会見にて菅義偉官房長官は、軽減税率の対象となる飲食料品は「酒類を除くすべての飲料食料品」としていますが、「まだ具体的に出ていない」とも発言されています。これから詳細が詰められる予定でしょうが、注視していきたいと思っています。

 

医療機関として取り組むべきこと

  • どの従業員のマイナンバーを把握すべき? 外国人労働者は?

 

医療機関側は、従業員(医師・看護師・薬剤師・種々の技師・事務職員含めた全ての医療スタッフ:ここでは「従業員」と記載します)等のマイナンバーを記載した税や社会保険の書類を行政機関等に提出するため、雇用形態に関係なく全従業員と役員のマイナンバーを取得しなければなりません。また、日本に居住する外国人にもマイナンバーが付与されるため、外国人従業員からも取得する必要があります。

派遣社員はというと、派遣元の会社に取得義務があるため派遣先の会社は取得する必要はありません。

正社員が少なくとも、パート、アルバイト等が多い会社、または外国人従業員が所属する会社の場合、取り扱いのマイナンバーが多く、または取得が困難な場合が考えられるため、特に注意が必要となります。

 

  • マイナンバーの必要な従業員等

・役員

・正社員

・外国人従業員

・契約社員、嘱託社員

・パート、アルバイト(高校生や大学生も必要)

※上記従業員等の扶養家族も取得が必要

また、報酬、料金、契約金等の支払調書や不動産関係の支払調書にもマイナンバーの記載が必要になるため、その支払い先からもマイナンバーを取得しなければなりません。

 

  • マイナンバーを記載する必要がある書類は?

 

2016年1月1日以降の給与等の支払いに係る、税務署に提出が必要な法定調書のうち、マイナンバーの記載が必要になる書類には以下のものが挙げられます。

☆マイナンバーを記載する書類の例

・給与所得の源泉徴収票、給与支払報告書

→提出:翌年1月31日まで

・退職所得の源泉徴収票、特別徴収票

→提出:退職後一年以内、もしくはまとめて翌年1月31日までの可

・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

→提出:年初の給与支給前日まで

・報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書

→提出:翌年1月31日まで

・不動産の使用料、譲受対価、斡旋料等の支払調書

→提出:翌年1月31日まで

上記は主な例であり、これ以外に税分野の書類はたくさんあります。

 

  • 従業員等への対応で注意すべき点

 

マイナンバーは法律で定められた税と社会保険の手続きに使用する以外の目的で取得することはできません。マイナンバーの取得の際にはあらかじめ従業員等や外部者に対して、「源泉徴収票作成事務のため」「健康保険、厚生年金保険届出事務のため」等その利用目的を特定して、社員へのメール等での通知または社内掲示板への掲示での公表をする必要があります。

またマイナンバーを取得する際には、第3者へのなりすまし等を防止するため厳格な本人確認を行う必要があります。本人確認には「番号確認と身元確認」という2重チェックが必要です。

ただし従業員の本人確認については、雇用関係にあることなどから本人に相違ないことが明らかである場合には、身元確認は必要ありません。

・番号確認と身元確認の方法

・個人番号カード(番号確認と身元確認)

・通知カード(番号確認)と運転免許証など(身元確認)

・マイナンバーが記載された住民票の写しなど(番号確認)と運転免許証など(身元確認)

 

これらいずれかの方法で確認する必要があります。

 

  • 従業員にマイナンバーの提供を拒否された場合の対応

 

従業員や報酬の支払先からマイナンバーの提供が受けられないときは、どうしたら良いのでしょうか?

この場合まず、マイナンバーの提供は法律上の義務であることを伝えます。それでもなお提供が受けられないのであれば、書類の提出先の機関の指示に従うことになります。

 

  • 提供を求めた経過等の記録保存を行い、単なる会社側の義務違反でないことを明確にしておきましょう。

 

④ マイナンバー制度導入における従業員が抱えている不安〜副業・バイトがバレる?〜

マイナンバー制度では、税務情報などを管理して、脱税等を徹底的に防ぎ税収を上げようという狙いがあり、かなり正確に税務情報が把握されることになります。よって、結論から申し上げますと、基本的には今まで以上に「バレる」ということです。

なぜかと申しますと、給与の支払いや報酬の支払いなどお金が事業所から個人に渡ったときには、誰にいくら支払ったのか?を必ず報告する必要が出てきますし、「誰に」の部分がマイナンバーで正確に特定されるからです。

なお、民間医療機関に勤務しているのであれば、労働基準法的には業務に支障が出ないのであれば副業は罰せられないのですが、近年でも依然として就業規則にて副業禁止を定めている医療機関は多く存在しているかと思いますので、従業員の方は慎重な対応が必要と考えられます。

また、公的医療機関の副業・兼業は、即刻懲戒免職を含めて厳しく罰せられます。

 

このような点からは、恐ろしい制度であり、国民にメリットはあるのか!?と思われるでしょうから、最後にマイナンバー制度の今後と各分野の期待についてまとめさせて頂きたいと思います。

 

⑤ マイナンバー制度の今後

2017年1月:国レベルでの情報連携が開始

スタート当初は、税金関係と雇用保険関係の処理にしかマイナンバーは利用されない予定ですが、その翌年から、より広く社会保障の分野で使用される予定となっています。この時期から、国の各機関でマイナンバーが連携されるようになると言われています。

個人が自分のマイナンバー情報を参照できる「マイナポータル」の運用がはじまるのもこの時期です。

なお、マイナポータルとは、別名「情報提供等記録開示システム」といい、インターネット上で個人情報のやりとりの記録が確認できるようになります。なお、以前は「マイ・ポータル制度」と呼ばれていましたが、正式名称が2015年4月に「マイナポータル」に決まりました。

 

2017年7月:地方自治体レベルでの情報連携が開始

さらに半年遅れて、マイナンバーの連携が地方自治体レベルにまで拡大されます。これ以降、国や地方自治体が管轄している個人情報は広く共有されることとなりますので、公的サービスがよりスムーズになることが期待されます。

 

2018年10月以降:民間利用の開始(検討中)

まだ検討中であり不確定ですが、将来的にはマイナンバーの民間利用も計画されています。時期としては、マイナンバーの特徴が充分に周知され運用にも慣れた2018年秋以降が検討されているようです。

 

金融分野おける期待

マイナンバー制度は、銀行口座と関連付けることも検討されており、公的な支援金や還付金などの振り込みもより円滑になると考えられています。

個人情報が流出・漏洩したときのリスクから現在は慎重な見方も多いですが、マイナンバー本来の目的に通じるものですので前向きに検討されています。

 

防災分野における期待

まずは税と社会保障、防災分野の行政事務へ導入されると明言されております通り、地震大国である本邦では、特に防災分野においてマイナンバー制度が有用であると考えられています。

2011年3月11日の東日本大震災では被災者も避難所も非常に広域に多岐に渡り、混乱をきたしたことは記憶に新しいと思います。そこで、例えば、避難所ごとに出退所の管理をする簡易的な機器やシステムを備えることができれば、被災者の所在や救援物資の迅速かつ効率的な配分も本制度は有用であると考えられています。整備の徹底には、非常に難渋することは容易に想像できますが、人命が関わっている分野だからこそ最優先で取り組んでいただきたいと祈念しております。

 

医療分野における期待

マイナンバー制度は医療分野での利用も検討されています。医療分野での情報共有が進むと、個人データの照合が容易になるほか、かかりつけの病院を変更する際にも追跡して適切な医療を受けることができるようになると考えられます。

また、交通事故による外傷や心肺停止などの重篤な病態で搬送されてきた際も(このような症例では身元の特定も困難なことが多いです)、マイナンバーを携帯することで、過去の医療履歴や検査結果・内服薬なども紐づけることができれば、より迅速な対応が可能になると期待できます。また、生活習慣病の是正にもマイナンバーの利用が期待されています。

この分野では、特に個人の医療情報の漏洩を危惧する声もありますが、メリットも多々期待出来ると考えられます。慎重な協議のもと、本制度の整備を心から期待しています。

 

以上、マイナンバー制度についてまとめさせて頂きました。これからニュースにてマイナンバー制度が取り上げられることが多いかと思います。今後もしっかり勉強して引き続きご報告させて頂けたらと思っております。

 

一日本国民として、一医師として、本制度が成熟し、国民にとって有意義なものとなることを祈ります。